[HOME]

[書評一覧]

 

『金持ち父さん』を読み返す (2)

「不動産投資家」は「投資家」か?

 

 

「ほぼ確実に値下がりする」投資とは

それというのも、一般に投資というものは、

 1. 購入 (入口)

 2. 収益 (不動産なら賃料、株式・債券であれば配当・利子など)

 3. 売却 (出口)

というサイクルから成り立っている。ところが、日本の住宅などは、購入時よりも売却時のほうがほぼ確実に値下がりしてしまう。そんなものを購入しても、それが果たして「投資」と言えるのかどうかさえ怪しいからだ。

 もちろん、購入時よりも売却時のほうが確実に値上がりしている投資先などは存在しないと言ってよい。「確実に値を上げる」と誰もが信じているとすれば、それはバブル化しているということだ。アメリカの住宅バブル、日本の土地神話がそうだった。

ところが、日本における住宅は、ほぼ確実に値下がりする。そんなものに「投資」するのが「日本における不動産投資」なのである。

 

 

これは「投資」ではない

「株式投資」からの連想で、「不動産投資」からは、あたかも株から配当を得るように入居者から家賃が得られるように思われるかも知れない。

けれども、実態はずいぶん違う。なぜなら、これは「投資」ではなく「事業」だからである。

実際、『金持ち父さん』以前の時代には、「不動産投資」という言い方はそれほど一般的ではなかった。それより「アパート・マンション経営」などと言うほうが普通だった。イメージとしては、新しい設備(建物)を購入して生産し、利益を上げ、旧くなったら下取りに出すといったところだろうか。日本の住宅が「耐久消費財」であるとみなされるゆえんである。

 

「投資家(I)」ではなく「自営業者(S)

 だから、日本人が『金持ち父さん』の教えを信じて不動産投資を試みたとしても、多くの場合は、「投資家」というよりは「町工場の経営者」のようになってしまっている。

すなわち、『金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント』の分類に従えば、「投資家(I)」や「ビジネス・オーナー(B)」ではなく「自営業者(S)」のほうに近い。これは、「従業員(E)」よりはいくらかマシなのかも知れないが、本来目指していたのとは別の方向に行ってしまったと言うべきである。

 

 

つまり、日本における不動産投資家の多くは、キヨサキ氏のいう「自営業者(S)」であって、「投資家(I)」ではない。

これを言い換えれば、「カネを稼ぐシステム」などはできていないということだ。

従って、特別な手腕と行動力をもって物件管理に憂き身をやつすのでなくては、成功はおぼつかない。

 

日本に「不動産投資」はない

株式や債券であれば、同じ銘柄を同時に買って同時に売った人なら誰もが同じ結果になるが、不動産ではそうはいかない。不動産とは収益を上げるための設備であって、生かすも殺すも経営者次第だからだ。

その意味で、日本には「不動産投資」なるものは存在しない。あるのは「不動産事業」であり「不動産経営」だけだ、と言ってもよいのではないだろうか。

 もしあなたが『金持ち父さん』のシリーズを読んでファイナンシャル・リテラシーに目覚めたとしても、安易に不動産投資に手を出すべきではない。

少なくとも日本では、それは「経営者」としての覚悟を決めた人だけが成功できる世界だと知るべきなのである。

『金持ち父さん』を読み返す(1)」に戻る