日本の銀行は「本来の業務」に徹せよ!!

 

「銀行のせいで税金をとられる」

 中小企業のオーナー経営者や個人事業主が「銀行のせいで税金をとられる」という話があります。

 別に銀行が税務署に告げ口するというわけではありません(それも無いとは言いませんが)。日本の銀行は、「サラリーマン」が住宅ローンを借りようとするときには何の問題もなく年収の3倍とか4倍もポーンと出すのに、むしろ財力のある「中小企業のオーナー」や「個人事業主」には何かと文句を付けて貸し付けないので、彼らが痺れを切らして現金で家を買ったりすると「税務調査」を受ける、という話です。

 

銀行の「形式主義」

 それというのも、銀行のローン審査が極めて形式的であって、申込者の信用能力や返済能力をきちんと評価できていないからです。能力のある人なら、自分である程度キャッシュフローをコントロールすることができます。大きな買い物(投資)をしたり、しなかったりすれば、最終的に赤字にしたり黒字にしたりすることも自分で決められます。その人(企業)をきちんと評価せずに、書面だけ見て決めるから、本当に返済能力のあるところには貸さない。その一方で、形式だけは整いやすい人には、背後に控えたリスクを見ないでバンバン貸し付けるから、ローン地獄に苦しむ人が出たり、焦げ付きが生じたりするのです。

 かつての「バブル」とその崩壊も、もとはと言えば、そのような日本の銀行の「形式主義」に原因の一端があります。

 人や企業そのものをきちんと評価せず(できず)、「担保」という形式さえ整えば融資するという行動原理であったために、一旦「担保」の価値が下がれば、なだれを打ったようにすべてが崩壊せざるを得ない、というのが日本型バブルのパターンでした。今のローン審査を見ても、基本的に「銀行は変わっていないな」というのが正直な感想です。最近、都心での土地の「ミニバブル」の背後に銀行がいるという話を聞いて、歴史はまた繰り返すのかという思いがする方も少なくないと思います。

 

銀行の本来の役割

 「担保をとるな」とは言いません。顧客の預金を預かる銀行としては、担保重視も致し方のないことでしょう。しかし、人や企業をきちんと評価することができず、ひたすら形式にばかり頼るのでは、何が銀行かと言いたい。

 銀行の本来の役割とは、「融資」という形で経済社会に「血液」を供給することでしょう。しかも、その対象は、成熟段階にある大企業というよりは、株式を公開していない成長段階の企業や中小、零細企業であるべきです。何故なら、株式を上場している大企業は市場で資金調達ができるので、銀行などによる資金の供給はそれほど必要としていないからです。

 言うまでもなく、中小企業、零細企業の中には資産等の乏しい企業もあります。これらを一律に排斥するのではなく、きちんと内容を評価して「融資可能な企業」と「融資不可能な企業」に選別し、担保資産は乏しくとも将来性の高い企業はしっかりサポートしてこそ、銀行なのではないですか。

 

「手数料ビジネス」に偏る銀行たち

 ところが、銀行がこういう地道なことをやっているという話はあまり聞きません。

 聞こえてくるのは、バブル再燃につながりかねない土地融資と、新たな収入源としての「手数料ビジネス」の話ばかりです。

 2005年から2006年初めにかけての報道によれば、大手銀行の業績は軒並み回復し、「もはやバブル後ではない」という声も聞かれるとか。しかし、業績回復の主役は、「銀行本来のビジネス」である企業向け融資ではなく、投資信託販売などから得られる「手数料収入」であるということです。

 最近になって、人々の関心がようやく投資や運用に向かってきたようですが、そもそもその理由はと言えば、銀行の預金金利が極めて低く、ほとんどゼロに等しいからです。すなわち、銀行はほとんどゼロに等しい調達コストで資金を集めていますが、それは本来向かうべき、そして真に資金を必要としている中小企業などには向かわず、都心の不動産融資などに使われています。

 

銀行の存在意義

長らく預金金利がゼロであったのは、不良債権に苦しむ銀行を救済するという性格が強く、そのあおりを喰う形で日本国民の財産形成が著しく妨げられました(元金500万円を年5%の複利で15年運用できたら、1000万円超となっていたはずです)。金利ゼロの恩恵を最も受けている銀行が、「今は預金しても利息は付かないですから、老後が不安でしょう」などと言って、金利ゼロの被害者である一般人に投資信託を売って手数料を稼いでいるというのは、どう考えても何かおかしい。しかも、最近の投資信託は、販売会社(銀行や証券会社など)の意向で販売手数料が高くなり、販売会社は確実に儲かる一方で、「値下がりのリスクはすべて投資家(つまり顧客)に帰属する」というのですから。

 規制緩和の時代に、あえて「投信販売をやめよ」などとは言いません。投資信託にリスクが付き物であることも当然です。しかし、もし日本の銀行に良心というものがあるなら、投資信託の販売手数料を引き下げ、国民が奪われた財産形成の機会を少しでも取り戻せるように後押ししたらどうでしょうか。「預金」という形で、せっかく低コストで調達した資金があるのだから、これを本当に必要としているところに融通するという「銀行本来の業務」から利益を得るように努めなければ、日本における銀行の存在意義そのものが問われることになるのではないかと思います。

 

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