強い販売と弱い運用

さらに、日本の代表的な投信運用会社の多くが証券会社や銀行の子会社であることに特徴的に表れているように、運用会社と販売会社では、概して「販売会社」の方が力が強いと言われています。運用会社が直接に投資家と向き合わず、販売会社の都合にばかり合わせているなら、優れた運用成績があげられるはずもありません。極端な言い方をすれば、投信を買った後の顧客、つまり投資家は、販売会社にとっては、もはや(「新たな利益を生み出す」という意味での)顧客ではなく、「コストのかかるアフターサービスの対象」でしかありません。販売会社の関心は新たな販売に向かっているはずです。何故なら、すでに商品を買ってしまった投資家のことを考えるよりも、新しい商品を販売した方が会社の利益になることは明らかだからです(さらに言えば、投資家が「現在保有している投信」を売って別の商品を買ってくれた方が利益になります)

年間200本近いファンドが新たに設定されている「設定ラッシュ」が続いている一方で、それを上回る数のファンドが償還(廃止)されているという「多産多死」状況が続いていることは、このような金融機関、とりわけ販売会社の都合によるものであると思われてなりません。本来「長期投資」を旨とするべき投資信託であれば、しっかりメンテナンスしながら何十年も続けていくべきものなのに、設定当初は鳴り物入りで宣伝しながら、ものの10年も経たないうちに「市場環境の悪化」とか何とか理由をつけて、損失が出たまま償還してしまうというのは、商品が最初から「長期投資を前提として設計されていない」からであるとしか思えません。本当に「長期」であれば、その間に市況が悪化する時期があるのはむしろ当たり前であるからです。その意味で、常に右肩上がりの市況を前提としているような商品には欠陥があると言わざるを得ません。

「投資信託は長期投資に適した商品」などという教科書的な一般論を言ってはいても、実は当初の「販売益」にしか関心がないから、そういう商品設計になるのではないでしょうか。

 

販売会社の事情

2006年現在で、日本の銀行や証券会社の業績は好調だとされていますが、実は大手証券会社はネット証券のあおりを喰って株式の売買手数料からの利益が薄くなる一方ですし、銀行はと言えば、「資金融通による産業の育成」という銀行本来の業務は手詰まりとなっているように見受けられます(それというのも、銀行は「誰が見ても明らかな大手優良企業」にしか融資しようとしないが、そのような企業はわざわざ銀行から融資を受けなくても資金調達の方法はいくらもあるからです)。そこで、これらの金融機関が新たな収益源として力を入れているのが「投資信託」の販売なのです。

このような現状では、「長期的な運用益」よりも、「目先の販売益」を目指すことに重点が置かれるのは、むしろ当然とも言えます。

 

「投資信託」との付き合い方

では、投資家はこの事態にどう対処したら良いのでしょうか。

以上に述べたような理由で、「日本で販売されている投資信託」の多くは、「買ってはいけない金融商品」であるという疑いを払拭することは、なかなか困難です。

しかしながら、「投資信託」という仕組み自体がおかしいわけではありません。そのことは、海外でミューチュアル・ファンドやユニット・トラストが投資家の資産形成に大きな役割を果たしていることからも分かります。おかしいのは、「目先の販売益」に偏っている日本の「投信業界」なのです。

その一方で、「株式投資」のハイリスクを避けつつ、ある程度のリターンを得たいと考えるなら、投資信託以外の選択肢は現実的に難しいかも知れません。

では、どうするか。

一つの考え方としては、日本の投信業界が「まともになる」のを待つ、ということがあります。いつまで待てばいいのかよく分かりませんが、気長に待てば、業界大手の考え方も少しは変わるのかも知れません。

そこまで待てないという方には、日本の投信業界で少数ながら存在する(かも知れない)「まともな会社」を、一生懸命に探すという手もあるかも知れません。

さらに、ある程度以上の資産がある場合は、思い切って「海外で投資する」というのも、一つの見識であり、意外に簡単、かつ低コストでできることです。スイスなどの金融先進国、投資家保護先進国で運用するメリットは、日本で投資信託を買うのとは比較にならないほど大きいと考えられます。

最後に、「日本という限界」の中で、「必ずしも投資家利益を第一に設計されていない商品」を買いつつ、それでも工夫と勉強を重ねることによって、できるだけ高いパフォーマンスを得ようとすることです。そんなことが出来るのかと思われるかも知れませんが、「投資信託」という金融商品の性質をよく理解すれば、これは必ずしも不可能ではないと思います。

このサイトでは、そのいずれの目的にも役立つような情報をご提供したいと考えています。

 

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