投信業界の大いなる矛盾

 当たり前のことですが、ファンドマネジャーが積極運用しているファンドが平均株価や株価指数に負けてしまうなら、(顧客である投資家にとって)ファンドマネジャーやその運用するアクティブ・ファンドの存在意義は失われてしまいます。

 顧客=投資家は、パッシブ運用をしているインデックス・ファンドを買えばそれで十分だからです。

ところが、インデックス・ファンドの多くは投信会社や金融機関にとってさほど儲からない商品設計となっています。すなわち、アクティブ運用をしている投資信託に比べて手数料がかなり安く設定されているのです。

先述のセミナーを主催していた投信運用会社だけでなく、投信業界のかなりの部分がインデックス・ファンドを「目の敵」にしているらしい理由はそこにあります。「主力商品がインデックスに負けてしまうのは、どうも・・・」というわけでしょう。

しかしながら、アクティブ・ファンドの「本当の敵」は、インデックス・ファンドではなく、自分自身の「割高な手数料(信託報酬など)」なのです。

アクティブ・ファンドの多くは、「インデックスに勝てない」というよりは、実は、「インデックスに上乗せしている手数料」に勝てないからです。

 

ファンドマネジャーの存在意義

しかし、仮に割高な手数料を取らないとするなら、(今度は投信運用会社にとって)アクティブ・ファンドの存在意義はなくなります。高い手数料がとれるからこそ、わざわざ専門のファンドマネジャーを雇って運用するのですから。

このように、アクティブ運用をしているファンド、そしてそこから主な収益を得ている投信運用会社は、「根本的な自己矛盾」を抱えています。

インデックス・ファンドを運用し、販売しているということは、そのような業界の「ジレンマ」を自らアナウンスしているようなものです。アクティブ・ファンドのマネジャーからすれば、インデックス・ファンドとは「目の上のたんこぶ」みたいなものかも知れません。

[]ここで言う「手数料」とは毎年かかる「運用手数料」のことであって、投信の購入時に一時的にかかる「販売手数料(申込手数料)」のことではありません。投資信託の販売手数料は、銀行や証券会社などの窓口販売の場合はかなり割高と言っていいと思いますが、最近ではインターネット取引の影響で販売手数料を無料とする投信も増えています(いわゆる「ノーロード」)。これに対して、「運用手数料」は一般に販売手数料よりもやや低めに設定されており目立たない存在であるとはいうものの、運用を続ける限り毎年かかるために、結果的には販売手数料以上に運用成績に響いてくることになります。ですから、長い眼でみれば、ノーロードのファンドを買うよりも運用手数料[信託報酬]の低いファンドを選択する方がむしろ重要であると考えられます(運用手数料の違いのリターンへの影響を後にシュミレーションしていますので参考にして下さい)

 

矛盾を解決する方法

ただし、この矛盾は全く解消できないわけではありません。

そのためには、例えば、スイスのプライベートバンクのように、口座の維持管理手数料などをとる代わりに、組入れファンド個々の運用手数料は無料化するなどの方法を採用することがあり得ます。

一定以上の運用資産があって初めて可能となることではありますが、一つの見識というべきでしょう。

これに対して、日本で事業を行なっている投資信託運用会社には、これとは異なる方法でこの矛盾を解決しようとしているものがあります。

それは、「アクティブ運用の手数料を下げる」のではなく、逆に「インデックス運用の手数料をアクティブ運用並みに引き上げる」というものです。

それで「アクティブ運用がインデックス運用に負けない」公算は高くなるとしても、これが良心的なビジネスであるかは疑問です。

投資信託の運用手数料が「見えにくい価格」であるからと言って、もともと運用コストがかからないはずのインデックス・ファンドの手数料を割高に設定するのは、いかがなものでしょうか。まして、これを「アクティブ・ファンド以上」の水準に設定するに至っては、投資家の無知を食い物にしていると言われても仕方がないでしょう。

投信運用会社(及びそのグループの中心企業である証券会社や銀行)の見識が問われるところですが、幸いこのような露骨なものはごく一部にとどまるようです。

 

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