書評

 

『プライベートバンク 本当の使い方』

オーレン・ロース著(ダイヤモンド社)

 

 

スイスのプライベートバンクについての好著

 スイスのプライベートバンクについて書かれた本のなかでは好著に属するが、内容、というよりは著者の姿勢について疑念を抱かざるを得ない面もある。だが、その一方で適切と思われる指摘もあり、一筋縄ではいかない本である。実際に運用の参考にする場合は、プライベートバンカーの意見を聞いて本当のところを確かめた方が良いだろう。

 第一の疑問点は、冒頭近くで、著者自身もコンサルタントとして付き添いながら、顧客がスイスでバンカーと面談する場面である。「保守的な投資でも年利が15パーセントにもなるの?」という、これみよがしの会話の引用はご愛嬌だが、そもそも顧客の秘密を守るべきコンサルタントである著者が、たとえ匿名にせよ顧客とバンカーの会話を書籍にして公開するなどということが果たして許されるのか否か。もしかしたら顧客の許可は得ているのかも知れないが、バンカーについてはどうなのか(まともなプライベートバンカーであれば、このような形での公開を許すはずはないと思われる)。いな、たとえ正式の許可を得て法的な問題はクリアしたとしても、コンサルタントとしての「倫理」を考慮するとどうしても納得することができない。これは、巻末近くに置かれた「顧客によるプライベートバンク体験記」についても同様である。

 第二の疑問点は、著者の言う「プライベートバンクの条件」についてである。著者は、「伝統的なプライベートバンクの条件」として「無限責任のパートナーシップ制」をとっていることを挙げている。その考え方に必ずしも賛成することはできないが、それはそれで一つの見識である。ところが、本書で「プライベートバンク」として具体的な事情が取り上げられているのは、ほとんどがUBSなどの「有限責任の株式会社制」を採用している銀行であって、パートナーシップ制の銀行の事情についてはほとんど言及がない。これは矛盾、あるいは一貫性を欠いた態度とは言えないか。

 言葉の意味にこだわることがさほど重要ではないかも知れない。しかし、「無限責任のパートナーシップ制」は、プライベートバンクの「条件」というよりは「歴史的な起源」のようなものであって、「プライベートバンク」という語を最も狭く解釈した場合に表れる究極の純粋形とでも言うべきものだろう。歴史的にはパートナーシップ制をとっていた銀行であってもその多くは現在、株式会社に移行している。その伝統的な文化や精神が、ただ単に株式会社になったからといって受け継がれていないとするのは早計だろう。

 他にもいくつかの疑問点があるが、ここですべてを取り上げて論じる余裕はない。

以上のような疑問点もあるにはあるが、「まともなコンサルタントであればプライベートバンクの紹介料や投資の成功報酬などはとらない」など、至極まっとうな主張も多く見られる。また、「口座を開く場合、紹介は必要ないかも知れないが、あった方がうまく行く」というのも基本的に正しい。

 その他、信託についても一般向きの類書がないだけに貴重な情報が書かれている。全体として、すべての内容を真に受けることはできないものの、現実のプライベートバンカーの意見などを参考にして修正すれば十分に使える有用な内容が含まれている好著であると評価することができるだろう。

 

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